おおうらメンタルクリニック院長の大浦です。

先日、長谷川式簡易知能評価スケールを作成された精神科医の長谷川和夫先生が亡くなられたとのニュースを目にしました。

この検査は、全ての精神科医が一度は必ず経験するもので、数分で出来て、特殊な器具も必要としないので、認知症治療の現場で広く普及しています。

自分も精神科1年目の頃から今までに、100回近くは施行していると思われます。

その中に数字の逆唱という項目があり、「これから言う数字を逆から言ってください。6-8-2」というもので(正解は2-8-6)、経験上これで失点される方が多い印象です。

検査用紙にある通りに「逆から言ってください」と言っても、緊張している状態で聞くと、認知機能に問題のない方でも混乱してしまう気がします。

 

せっかく優れた検査があっても、施行する方の問題で正しく評価できないと、過剰診断に繋がりかねません。

どうすれば(正解のヒントにはならない形で)設問の意図をうまく伝えられるか悩み、ある日先輩の先生に聞いた事がありました。

その時の返答としては「例えば1,2,3と言えば3,2,1という要領でー・・・」と、先に例を示してあげるというものでした。

聞いてしまえば何でもないような事ですが、当時の自分には「目から鱗」でした。

検査はマニュアルに沿って施行するものですが、こういった何気ない「親切」を取り入れる事が、正確な診断につながる気がします。